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これまでに紹介した記事のほかにも、編集者の興味を引いた数多くの記事がある。その中からいくつかを紹介しておきたい。

 このシリーズが始まって早々の2018年4月、「大手企業が水道事業に参入」という記事が載った(資料9)。インドネシアにおける民間企業による水道分野への進出に関する記事だ。
 環境悪化により安全な水の供給が減少しているため、生活に必要な水道の給水を増加するための民間投資が上昇し続けている。そのような環境下で、水道事業に参入および参入を計画している大手企業の戦略、すなわち、ビジネスを差別化し、成長を持続的に発展させる取り組みについて、最新の状況を紹介している。
(1)Salim グループの Moya Indonesia Pte Ltd は Aetra Air Jakarta 社、Aera Air Tangeran 社 及び AetraAir Indonesia 社 の株式を取得し、給水人口 440,000 人の Jakarta の水道施設の管理を 2023 年 2 月 1 日まで、給水人口 360,000 人の Tangeran 地域の水道施設の管理を 2034年 10 月 2 日まで行う契約をした。
(2)Adhi Karya Persere社は韓国のKウォーターとジョイントベンチャーを組む交渉を行っており、Bandar Lampung の水道施設(2020 年 12 月運転開始)の入札に参加している。このプロジェクトは Adhi 社と Suez社とのコンソーシアムの成果である。
(3)その他、、Adaro Energy 社は今後 5 年間に 4,000liter/s の給水能力を持つ目標を掲げ、2 つの BOT プロジェクト(給水量 400liter/s のGresik 水道と給水量 500liter/s の Banjar Intan水道)を昨年来運営している。

 続いて、2018年10月には、「Moya 関連会社がインドネシアの水道プロジェクトを獲得」という記事が載った(資料45)。インドネシアの水処理会社;Moya Holdings Asia が中部ジャワのスマラン Semarang の水道事業のBOT プロジェクトを落札した内容について紹介している。
Moya 子会社(PT Aetra Air Jakarta と PT Medco Gas Indonesia)が共同出資する
新会社がプロジェクトを実施。Moya Holdings Asia の今後の期待は、インドネシアにおける水事業拡大と強化を図ることだ。
○落札内容
1.事業内容;浄水場、送水管及び浄水池の各1施設と配水池 2 池などの設計、資金調達、
建設、維持管理及び移管。
2.契約締結;2018 年 10 月末。
3.建設期間;2019 年 4 月から 2 年以内。
4.コンセッションの期間;運転開始から 25 年間。
☆出資比率;PT Aetra Air Jakarta;75%. PT Medco Gas Indonesia;25%。

 2018年7月には、「インドネシアにおける水道事業民営化の新しい波」と題する記事が載っている(資料29)。その内容は、以下のとおり。
○2019 年度までにすべての国民が安全な水にアクセスできるとの目標達成の為には2700 万件の新たな給水管の接続が必要であり、その総費用は US$20.8 百万ドルである。
政府文書 Public Private Partnerships, Infrastructure Projects Plan inIndonesia や大統領令から明らかなように、この国家目標を 2019 年度に達成する為の特効薬として、インドネシア政府は水道事業の民営化を導入した。
○地方の水道事業民営化の状況紹介
1.Pasuran;ジャワ東部 Umbulan 水道は Surabaya 等の人口密集地域や工業地帯に水道水を供給する政府の「旗艦」プロジェクトであり、主に官民パートナーシップ(PPP)で実施されている(34 百万$ドル)。
2.Semarang;ジャワ中央部 急速に進行する地盤沈下への対策として水道施設を建設する。優良な水道事業体が存在するにも拘らず、政府は民間企業を指名した(84百万$ドル)
3.Bekasi;ジャワ西部 未だ計画段階であるが、Bekasi 市は民間企業へ発注する可能性が高い。
4.バタム島;民営化企業により運営中。2020 年に契約が更新されるが、引き続き民営会社と契約するものと思われる。
5.Bandar Lampung;2018 年開始のコンセッション(1.06 億$ドル)の候補として民間の 5 社を選定。
6.南バリ;公共事業相は、民間企業による水道施設建設を約束。
7.その他;Pondok Gede(US$25 百万) ,Pekanbaru(US$35.5 百万)、Bantan 原水供給(US$17 百万)
○水道事業への民営化推進に対する問題点紹介
水道の民営化は、50%以下の水道普及率、料金の高騰等の惨めな結果をもたらした。
ジャカルタでは、市民が訴訟を起こし、民営会社との契約の無効化判決獲得したが、問題点は多く残っている。(資料23参照)

 このほか、少し変わったテーマの報告も目を引いた。2019年1月に掲載された「竹、即ち水」(資料61)。竹林が、水源を保全し干ばつにも強いなど、竹林の持続可能な管理の必要性について紹介している。竹は、雨季には水分を吸収して中空の節に貯蔵し、乾季に放出する性質があるという。
@ インドネシアは、世界 6 位の竹生産国。手工芸品産業の原料として使われていた。
1980 年〜2000 年に、竹林の伐採が進み、森が減少するにつれ、水の枯渇が進む。
☆2018 年の乾季には、4,000 以上の村が干ばつ、農作物の不作、安全な水の不足を経験(インドネシアの国家防災庁(BNPB)のデータによる。)
A 竹林により水の保全に成功している村(Sumbermujur 村)の例を紹介。
14 ヘクタールの竹林が水源を取り囲むことにより、水が枯渇することはない。
乾季(4〜10 月)水の流量は毎秒 600 リットル(約 50,000 立法メートル/日)。
雨季(11〜3 月)水の流量は毎秒 800 リットル(約 70,000 立法メートル/日)に増加。
7,000 人の村人に安全な飲料水を提供し、436 ヘクタールの水田を灌漑。周辺の 3つの村にも分水。一時、竹林の減少により、水の枯渇が見られたが、いち早く竹を植え直し、水不足を解消できた。
結論;竹林の持続可能な管理が必要。
コミュニティ所有の森林は貴重であるが、ますます伐採の脅威にさらされて
いる。(人口の増加と資源需要の増大にいかに対処するかが課題。)

 WLC16 (第16回世界湖沼会議)開催国インドネシアにおける湖沼の現状(雄大なトバ湖など)は、 2016年4月、公益財団法人 国際湖沼環境委員会(ILEC)が発行しているニュースレター記事の概略である(資料73)。
トバ湖は、マレー半島から西にマラッカ 海峡を隔てたスマトラ島北部にあり、面積(約 1,130 平?キロメートル)、水深(最深部で約 530 メートル)ともにインドネシア最大。東南アジアでも雨季のトンレサップ湖(カンボジア)に次ぐ規模を誇り、カルデラ湖としては世界最大。山々に囲まれた湖の中心部にはサモシール島という有人の島があるほか、湖岸から湖底にかけて急激に深くなっている地形が特徴。湖水の透明度は高く見えるが、人口が集中する地点では富栄養化が進んだ湖面にホテイアオイの群生や、湖岸への家庭ゴミ不法投棄による水質汚染が?られる。休暇シーズンには国内外からの観光客で賑わう。漁村や農村が点在する流域には全体的にのどかな暮らしぶりが息づいており、湖上には対岸からの農産物や商用の物資を運ぶ人々を乗せた連絡船が頻繁に行き交う。
スマトラ島ではパーム油と天然ゴムのプランテーションが盛んで、トバ湖への最寄空港があるメダン近郊にもこれらの密林が拡がっている。両資源ともにアジア屈指の輸出量でインドネシアの経済を大きく支えているが、プランテーションでの精製は深刻な水質汚染源となるだけでなく、いずれの樹木も十数年で資源採取効率が低下し長くても 25 年程度 で再植林を要するため、使い終わった後の木材をバイオマスにするなど廃水処理と資源の有効利用が課題となっている。
バリ島北西部のバトゥール湖、中央ジャワのラワぺニン湖についても紹介している。

 最後に、プラウスリブで海水淡水化施設4基が稼働しているという記事(2019年11月25日)の紹介(資料108)。
インドネシアの首都ジャカルタ沖にあるプラウスリブ(千の島:ジャカルタから最も近いビーチリゾート。一番近い島で高速艇で30分程度、遠い島で2時間半程度)の水不足を解消するための海水淡水化施設4基が 2019年11月20 日に稼働したことをジャカルタ・ポストが報じている。ジャカルタ特別州は 2016 年から総額 1,820 億ルピア(約 14 億円)の予算を計上し、2018年建設を開始していた。
 ジャカルタに住んだことのある人なら、必ず訪問したことがあると言っても良い有名な観光地、プラウスリブ。ついに、ここで海水淡水化施設が動き始めたというニュースには、かつて訪れた方々はとりわけ感慨深い思いをされたことだろう。

情報提供シリーズの関連記事
資料9: 大企業が水道水供給事業に参入(タンゲラン、バンダールランプン)、2018年4月、joho9.pdf
資料45: Moya unit wins tender for water supply system in Indonesia、2018年10月、181002w.pdf
資料29: A New Wave of Water Privatisation in Indonesia、2018年7月、201807W02.pdf
資料61: Bamboo means water(Sumbermujur村、東ジャワ)、2019年1月、20190101W.pdf
資料73: WLC16開催国インドネシアにおける湖沼の現状(雄大なトバ湖など)、2019年4月、20190403-1J.pdf
資料108: 首都沖で海水淡水化施設4基が稼働プラウスリブ、2019年12月、20191202-1J.pdf
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