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浄水器の需要


 「飲める水」の供給を水道施設が日本のように果たすことができないままでいるインドネシアでは、浄水器の普及が進んでいる。
東南アジアの浄水器市場は年平均成長率(CAGR=compound averagegrowth rate) 8.3%で急成長し、2026年末まで に 7億 8,710 万 USD に達する見込み(資料71)。
 内容;東南アジアの家庭用浄水器市場についての現状と今後の見通しの紹介。
 初めに;東南アジア諸国の政府、地方自治体、市民団体は、高度に濾過された飲用可能な水を住民へ供給する考えを放棄しておらず、人口の増加・一人当たりの使用量の増加により、今後さらに浄水器の需要が増加すると予測。
 Persistence Market Research(内容は「備考欄」の URL 参照)によれば、東南アジア諸国における家庭用浄水器の市場は、金額ベースで、現状(2016年)3.5 億 USD が 2026年に 7.81億 USD(CAGR;8.3%)となる。
なお、台数ベースでは、"Residential Water Treatment EquipmentMarket: Southeast Asia Industry Analysis & Forecast, 2016-2026,"(家庭用浄水器市場、東南アジアの現状分析と予測;2016〜2026)によれば、現状(2016 年)約 600万台が 2026年 1,500万台(CAGR;9.3%)となる。
○インドネシア;インフラ開発と経済成長の面で東南アジアの主要国の一つ。
東南アジアの家庭用浄水器の 2016年売上高(金額ベース)の 40%を占め2026年までの予測;3.6億 USD。
マレーシア及びフィリピン;合計で東南アジアの家庭用浄水器の 2026年売上高の 30%。
○浄水器の需要が急増
東南アジア諸国では、産業の急速な発展に伴い地下水と表流水が汚染されたため、家庭用浄水器の 2台に 1台は、逆浸透(RO)方式である。しかし、一方で UV 方式が増加しており、2026年には浄水装置市場での売上高は 1.8億 USD に増加すると予測されている。
○東南アジアでの浄水器メーカーの動向
AO Smith Corporation、Mazuma Thailand、PT Holland;
東南アジアの家庭用浄水器市場に参入中。
Eureka Forbes Ltd.、Cleansui、Kent RO Systems Ltd.;
市場での地位を既に確立している。
Panasonic Corporation、Koninklijke Philips NV、LG Corporation;
市場での地位を着実に拡大中。

 このような条件下で、水処理機器販売ベンチャーのエーエスジェイ(仙台市)は、インドネシアの学校で飲料水を提供する事業に取り組んでいる。ヤシの殻を使った簡易浄水器の製造を現地で進め、2018年には機器輸出も始めた。インドネシアは上下水道の普及率が低く、中川一社長(56)は「子どもたちが安心して水を飲める環境を広げたい」と意気込む(資料89)。
 エーエスジェイは13年に中川社長が設立し、社員9人。国内では福祉施設や工場など飲料水を大量に使う施設向けに地下水処理設備の施工や販売を手掛ける。中川社長は大学卒業後に水処理関連の企業を渡り歩き、大手浄水メーカー社員だった約15年前に仙台に転勤。以前から途上国向けの事業を考えていた。13年、知人の誘いで初めてインドネシアを訪れた。小学生から大学生相当の年齢の生徒が通うイスラム教系の私立学校には孤児も通っていたが、浄水設備はなく、入浴も食事も汚水でせざるを得ない状況だった。「人のためになることは商売になる」と考えた中川社長。現地の学校向けに事業を行うため独立し、エーエスジェイを起業した。
 飲料用への浄化には40に上る検査項目があり、ろ過や酸化、淡水化を組み合わせた処理が必要。中川社長は培った技術で現地に茂るヤシの殻の炭を使ったろ過機を開発し、西ジャワ州などの学校5校に設置した。特に地下水の水質が悪い地域の学校には、自社で扱うアメリカ製浄水機器の輸出を計画。日本政策金融公庫仙台支店の融資を受け、18年12月にバンテン州の学校に初めて納入した。今年3月、飲料水の供給を始める予定だ。

 一方、日系企業の活躍も顕著だ。2019年8月8日パナソニックは、インドネシアでの水ポンプの累積生産台数が3,000万台を超えたと発表(資料99)。(出荷先は、インドネシアだけでなく他の東南アジア諸国、中東を含む。)
1.イノドネシアの水ポンプを取り巻く環境
水道施設の設置が不十分な地域が多く、住民は、生活水として井戸水に大きく依存。
一方、電力の供給も十分ではない地域も多く、水ポンプ使用時は、他の電気器具の電源を OFF にする必要がある。
パナソニックは、一般家庭用の低出力低容量タイプから集合住宅用の高容量タイプまで幅広く、地域に合わせた開発を推進している。
2.パナソニックの水ポンプの製造の歴史
PMI(備考1参照)は、パナソニック、SANYO および KDK ブランドの製品を生産する唯一のグローバル工場。
○1988年、ナショナル(現パナソニック)ブランドで生産開始。
○1998年、新工場建設;生産規模拡大。
○2011年、SANYO ブランド製品の生産開始。
近隣諸国への輸出;
1992年;マレーシア、1998年;ベトナム、1999年;ミャンマー、2016年;中東。
☆パナソニックは現地の生活環境やライフスタイルに合わせて新製品を導入し、生活環境改善に貢献してきた。
パナソニックは、2018年に創立100周年を迎えた、多様な電子技術およびソリューションを持つ企業。グローバルに事業を拡大しており世界中に582 の子会社、87 の関連会社を運営。2019年3月末連結年間売上高;8,003 兆円。

 パナソニック エコシステムズ株式会社は、2020年 4月より、インドネシアにおいて、井戸水を浄化する「セントラル水浄化機器」の販売を開始する(資料122)。
 インドネシアでは、上水道の普及率が低く、ウォーターポンプを用いてくみ上げた井戸水を生活用水として広く利用されている。パナソニック エコシステムズは、1988 年に、インドネシアで National(現Panasonic)ブランドのウォーターポンプの生産を開始した。人々の住環境や生活スタイルに対応した新製品を順次開発し、2019年 4月には、生産累計 3,000 万台を突破。現在は、インドネシアをはじめアジア諸国、中東など、グローバルに展開している。
 インドネシアの井戸水には、鉄分や濁りなどが含まれていることが多く、井戸水を用いて洗濯した衣類が鉄分の影響で変色したり、浴槽や便器が汚れるなどの課題があり、きれいな生活用水が望まれている。これに対応するために、従来除去が難しかった井戸水の鉄分も除去する「セントラル水浄化機器」を開発した。この「セントラル水浄化機器」は、井戸水に含まれる除去困難なイオン状の鉄分を、パナソニック エコシステムズ独自の高速酸化処理により除去。加えて濁りも取り除き、浄化した生活用水を建物内に供給する。また、ユーザーによるメンテナンスも簡単に行える構造とし、低コスト、低メンテナンス、省施工の水浄化システムである。プレスリリース(2020年2月6日)

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資料71: South East Asia Residential Water Treatment Equipment Market is beinganticipated to soar at 8.3% CAGR and reach US$ 787.1 million market value by theend of 2026、2019年3月、20190301W.pdf
資料89: 途上国の子に飲み水を 仙台のベンチャー、インドネシアの学校に浄水器設置 ヤシ殻炭でろ過機開発、2019年7月、20190701-4J.pdf
資料99: Panasonic's Cumulative Water Pump Production in Indonesia Tops 30 MillionUnits、2019年9月、20190902W.pdf
資料122: "インドネシアで井戸水の生活用水向け「セントラル水浄化機器」事業に参入"、2020年3月、200301-3J.pdf

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