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インドネシアの首都移転の決定と背景


インドネシア政府は、2019 年 4月29日首都をジャカルタから移転する計画を閣議決定し、ジョコ大統領は、首都をジャワ島外に移転するため、今後数ヶ月の間に候補都市の詳細な計画を作成するよう閣僚に伝えた。移転理由のひとつは世界最悪とも言われる交通渋滞だが、海面上昇と地盤沈下による水没の危機という差し迫った事情もある。地盤沈下によるジャカルタの水没の危機については、次節で詳しく見ることにする。(資料7880

インドネシアでは首都移転というアイデアは決して新しいものではなく、初代大統領のスカルノが 1957 年に検討課題に取り上げてから、これまでに中央カリマンタンの Palangkarayaや南スラウェシの Makassarなどが議論されたことがある。インドネシア政府は、その後、2019年 8 月に首都を東カリマンタンに移転することを発表した。(移転は 2024 年〜)。
首都移転について、移転先となる東カリマンタンの知事は、インドネシアの新しい首都への願望に関する独占インタビューで The Sunday Post に以下のように述べた(資料102)。

インドネシアの新しい首都は、将来の世代の為に、持続可能な状態を維持する「森林都市」になる。少なくとも 70%の「オープングリーンスペース」を持つように設計される予定。新首都の開発は 2021 年に開始し、最初のフェーズは 2024 年に完了予定。事業全体の費用;466 兆ルピア(約 490億米ドル)。約 250,000ha を占有;ジャカルタ約 60,000ha の 4 倍。(住宅およびオフィスビル、居住地、商業地域が含まれる。)人口の多くは公務員が占め、広大な土地が緑豊かな土地となる。2045 年までに、新首都の地域は 20 万ヘクタール以上となる予定。インドネシア政府は、開発が、森林保全に影響を与えない事を明確にしている。カルティム(Kaltim)が新しい首都に選ばれた理由について、石油、ガス、石炭などの天然資源が豊富で、インドネシアの中心に位置する事、地震や台風や津波などの自然災害がない事。そして、2 大都市;バリクパパンとサマリンダに挟まれていることが挙げられている。バリクパパンには国際港、バリクパパンとサマリンダを結ぶ 99km の高速道路もあり両都市間の移動時間を短縮。

電気と水の供給についても、本川と多くの支流があるため、この地域をさらに 50 年間発展させるのに十分である。「新しい資本が導入されると、BIMP-Eaga(ブルネイ,インドネシア,マレーシア,フィリピン 東アセアン成長地域)諸国は、経済的プラスの恩恵を受ける。カリマンタン島には、2 つの国(インドネシアとブルネイ)の首都と、3 つの国(インドネシア、マレーシア、ブルネイ)があり、地球上には、このような島は他にはない。

インドネシア政府高官は、東カリマンタンの新首都の開発に対する海外及び国内の投資を処理する特別機関を設立する方針を示している(資料123)。
1.特別機関の役割と進捗について
1)強力な権限;首都投資庁(the Capital Authority Agency)が一元的に認可。既存の投資調整委員会や BKPM の同意は必要なし。
2)現在海外からの投資を必要とするプロジェクトを選択中。
(内容;公共交通機関、上水道、石炭火力以外の発電所など)
☆現在は、韓国、日本、スペイン、米国、ドイツの投資家が関心を表明している。
3)機関の責任者;大統領が人選中。
2.今後の日程
1)マスタープラン;2020 年半ばまでに完成。
2)建設工事着工;2020 年中。
3)新首都の機能開始;2024 年の前半
3.その他
1)新首都の総面積;18 万ヘクタール。
2)移転プロジェクト費用;330 億ドル(19%は国家予算、残りは地方と海外)
一方ジャカルタの住民は、ジャカルタが直面している問題は地方政府が単独で解決するには大きすぎること、解決策に対する姿勢は知事により異なるが、連邦政府の取組は継続されることを主張し、首都が移転する事による影響を心配している(資料106)。

ジャカルタ知事のアニス・バスウェダンも懸念を表明、「地下水汲上げをやめさせる為には、新たな水源が必要であり、その為には他の州の協力が必要。中央政府はジャカルタと周辺の州との間の協力の仲介に尽力してきたが、地盤沈下の問題を解決するには、多くの資金が必要。」と述べている。
また、「水道がまだ普及していない地域での地下水の使用に対して許認可と税金徴収を計画している。即ち、個人所有者が許可なく地下水を汲み上げた場合、罰金を科す事、建物の使用については、使用権を取り消す。」と述べた。

国家開発計画省の地域開発担当副大臣であるルディ・プラウィラディナタ氏は、中央政府が引き続き地盤沈下問題を含む問題に取り組むと以下のように述べた。
「いくつかのプロジェクトが進行中あり、政府としては彼らに資金を提供し続けるか、ジャカルタが外国から融資をうけるのを支援するかのいずれかになるだろう。首都を移転すると、ジャカルタが直面している問題のいくつかが緩和される。人が減れば、交通量が減り、きれいな水へのアクセスが増えるという効果はある。結論として、ジャカルタはインドネシアのビジネスと経済の中心地として残る。即ち、国の重要な都市としての機能を持ち続ける事を意味する。」

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